相談者
先生、私、ある会社の役員をやっているのですが、経営方針を巡って、社長と対立しています。
他の役員も私に同調しているので、明日にでも取締役会を開いて社長を辞めさせて、平役員へ降格させたいのですが。
弁護士
「明日にでも取締役会を開いて」ということは、御社は取締役会があるのですね。取締役は何名ですか? 監査役はいますか?
相談者
取締役は5名です。監査役は1名おります。
弁護士
取締役会開催通知は出しましたか?
相談者
いえ、まだです。今まで、そんなもの出たことがなかったので。
弁護士
それはまずいですよ。社長を首にするなら、あとで取締役会の手続きにケチをつけられないよう、しっかり法律上の決まりを守らなきゃ。
本当なら、取締役会招集通知は、1週間前までに、各取締役及び監査役へ発しなければならないところです(会社法368条1項)。
ただ、各取締役及び監査役全員が同意すれば招集通知を省略できるので(会社法368条2項)、今からでも各役員さんと監査役の先生に連絡を取って、同意書をFAXか電子メールで送ってもらって下さい。
相談者
社長からも同意書は必要ですか?
弁護士
必要です。あと、相談者さんに取締役会の招集権があるのか、定款でしっかりチェックして下さい。
相談者
分かりました。定款上、私に招集権がない場合、何とかして取締役会開催にこぎ着けるにはどうすれば良いですか。
弁護士
会社法上は相談者さんご自身が取締役会を招集する方法もありますが、今回のケースでは、社長にはギリギリまでこちらの動きを気づかれたくないですよね。
ここら辺はある程度のテクニックが必要ですが、それをここで公開するのは止めておきましょう(笑)。
相談者
了解です。それじゃ、無事に取締役会を開催できたとして、先生に同席してもらって、取締役会を仕切ってもらえますか?
弁護士
取締役会にオブザーバー的な立場で同席するのは構わないけれど、私が役員の代理人として社長解職の動議を出したり、投票したりすることはできませんよ。株主総会とは異なり、取締役会では代理人の出席は認められないとされているから。
だから、仕切るのは、相談者さんが自分でやらなければダメですよ。
相談者
そうですか。それじゃ、社長を解職する際、社長がとうとうと反対意見の演説を始めたらどうしましょう?
弁護士
自分が解職されるかどうかという場面では、社長は特別利害関係人として取締役会での議決権がなくなりますし(会社法369条2項)、取締役会への出席権及び意見申述権もなくなるとされていますから、あまりうるさいようならば、いったん退室してもらって、他の議題へ移るまでの間、隣室で待機してもらえば良いでしょう。
相談者
分かりました。合法的に社長の同席を拒否できると聞いて、少し安心しました。
弁護士
あともうひとつ、今の社長を解職した後、直ちに新しい社長を取締役会で選ばなければなりませんが、新しい社長を選ぶ際には、今の社長にも議決権があるので、注意して下さい。