相談者
弁護士さん、店子さんの許可なく家主の交代はできないんですかね?
弁護士
なんですかい、やぶから棒だな。
相談者
いえね、私、自分の建物を店子に貸していて、店子がそこで商売をしているのですけど、私も年だから、建物を売却して老後資金を貯めようと思って。
そしたら、店子のやつ、俺を追い出すつもりか、そんなことは認められねえ、それでも建物を売るというなら、商売が駄目になった分、損害賠償請求してやるなどとうるさいんですよ。
弁護士
それは、店子さんの勘違いだ。
あなたが建物の持主である以上、建物を売る売らないはあなたが決めることで、店子さんはそれについてどうこう言えませんよ。
それに、損害賠償うんぬんという話も、そいつはできない相談です。というか、店子さんの商売、別に駄目になりませんよ。
相談者
どういうことですか?
弁護士
きっと、店子さん、家主が代わったら、新しい家主から追い出されると思ってるんでしょう。
でも、店子さん、そこの建物で商売しているっていうことは、店子さんが入居する際、家主であるあなたからちゃんと建物の引き渡しを受けていたということですよね?
相談者
はあ、そうですが。
弁護士
ということはですね、これから先、あなたが建物を誰に売ろうと、店子さんは、あなたと店子さんとの間で締結されていた賃貸借契約の内容を、建物の買主にも対抗できるわけです(借地借家法31条1項)。
相談者
???
弁護士
一言で言うと、建物の所有者が代わっても、あなたと店子との間の賃貸借契約は消滅せず、「家主という地位」があなたから建物の買主に引き継がれた状態でそのまま継続するということです。だから、賃料を滞納しているなどの事情がない限り、新しい家主は、店子さんを追い出すことはできないのです。
相談者
なるほど、じゃ、店子さんの商売はこれまで通りというわけですね。
弁護士
そう。その点を店子さんにもよく説明してみてください。