読書日記「行政法概説Ⅱ」

「法律書を読むことは,法律家にとって,足腰を鍛えるようなものである。」

 

 どこかのブログで,このようなことが書いてあった。

 

 意味するところは,「法律書を読んでもすぐに何かが変わるわけではないが,常日頃から勉強をしていないと法律家としての基礎的能力が落ちていきますよ。」ということであろう。

 というわけで,1年程前から,意識的に,自分の専門外の分野も含めて,法律書に目を通すようにしている。 

 本書は,司法試験受験生の基本書として定評があるらしいとの情報に接したため,試しに読んでみたものである。

 

 本書は,「行政法概説Ⅱ」とあるとおり,シリーズ物である。
 具体的には,「行政法概説Ⅰ」が行政法総論を,本書が行政救済法を,「行政法概説Ⅲ」が行政組織法・公務員法・公物法を,そして「地方自治法概説」が地方自治法を対象にしている。

 

 本書を含めた「概説」シリーズの特徴は,何と言っても,情報量が多いことに尽きる。合計で,約1900ページもある(索引は除く)。特に,「概説Ⅰ」「概説Ⅱ」はまだしも,現在読み進めている「概説Ⅲ」になると,毎ページのように,聞いたことのない法律や行政組織が出てきて,適度な睡眠導入剤となっている(特に,行政組織法の部分)。行政法の全てを制覇せんとする宇賀克也先生の日頃の研究に,頭が下がるばかりである。本シリーズは,大学・大学院での講義用テキストとして使われているというが,さすがは東大生だ。

 

 さて,「概説」シリーズの中で特に本書を取り上げたのは,本書の第4版を読み終えてやれやれと思う間もなく,第5版が出版されてしまったからである。そんな殺生な,第4版が出てから1年7ヵ月しか経っていないのに。
 しかし,よく見てみると,2004年2月28日に出た「Ⅰ」は既に第5版であり,2004年11月30日に出た「地方自治法概説」に至っては,何と第6版になっていた。改訂版の出版ペースを確認していなかった私の判断ミスだ。

 もっとも,改訂版の出版ペースが速いのは,それだけ宇賀先生が最新情報のアップデートに熱心で,本書の内容が信頼できる証でもある。本シリーズの内容を理解していれば,行政事件について一通りのことはできるだろう。

 

 欠点は(欠点と言えるかどうかだが),とにかく分量が多いので通読には適さないことと,「~と思われる。」という表現が多いことぐらいか。後者の方は,宇賀先生の謙虚さの現れとも言えるが,好みの分かれるところかも知れない。