災害復興とアベノミクスと空き家問題と不動産登記制度(1)


 例えば,家,マンションやビルを買ったりするとき,普通は,売主から買主に対して,所有権を移転する登記手続が行われますが,実は,権利の登記は任意であり,登記をしなくても,法律上は買主に対して所有権が移転します。

 同じように,相続で所有権が移転する場合,相続登記はしてもしなくても良いので,所有者が亡くなった後,相続の際に相続人が名義変更をせず,そのまま誰も手を付けないまま相続が繰り返される・・・というケースが発生します。

 この場合,登記名義上の所有者は元々の所有者ですが,法律上の正式な所有者はその相続人であり,相続が重なると,相続人=不動産の所有者が数十人に及ぶということも珍しくありません。

(知り合いの弁護士の中には,相続人を探してみたら,50人以上になったというケースに遭遇した人もいます)。

 

 売買の際に登記をするのは,利害関係人(売主側の第三者や,不動産の賃借人)に対して,所有権が確かに買主に移ったことを主張できるようにするためですが,逆に言えば,山林など,不動産としての価値が小さい場合は,わざわざ費用と労力をかけてまで権利を保全しようというインセンティブが働かないため,相続登記が行われていない不動産は,相当な数に上っているとされています。


 ここで重要なのは,「登記がなくても,所有権は移転している」ということです。

 このことが,「災害復興」,「アベノミクス」,「空き家問題」の全てに渡って,ジワジワと,しかし甚大な影響を及ぼします。


(続く)