(前回は,こちら)
前回のブログ更新から,既に3ヵ月近く。
こんなに期間を空けていたのかと,自分でも驚きました。
これからは,もっと更新頻度を上げようと,反省した次第です。
さて,司法試験受験記の続きです。最後の論文試験を受けるところで止まっていたのでした。
2001年の7月,自宅から徒歩3分の早稲田大学で,再び論文試験を受けることになりました。
このとき考えたのは,「文体がスマートでなくても良い。字がきたなくても良い。とにかく,問われていることを最後まで書けるようにしよう。」というものでした。
初日は,憲法,民法,商法です。
憲法と民法を終えての感触は,可もなく不可もなくという感じ。私の場合,憲法,民法はもともと得意ではなく,大失敗しなければいいと考えていたので,まずはホッとしました。
そして,初日の最後の科目,商法が始まり,問題用紙を見たとき,私は思わず声を上げそうになりました。
当時の商法は,会社法,手形小切手法,商法総則・商行為法の3分野が試験範囲となっていましたが,商法総則・商行為法は,10年に1回出題されるかどうかというほど,出題頻度が低かったため,多くの受験生は手薄にしておりました。
私も,この年の6月,予備校の受験生スタッフとして,予想答案練習会の問題,解答例や解説の作成に携わった際,商法総則・商行為から予想問題を作ってみたのですが,まあ,出題可能性は低いだろうと考えておりました。
ところが,今,目の前にある商法の第2問目の問題は,自分が予備校で作った問題にそっくりなのです。
落ち着け,落ち着け。「ヤマが当たった」と言って舞いあがって,本試験の問題文と予想問題の問題文の微妙な違い,問いの内容の微妙な違いに気づかず,関係ないことをたくさん書いて自滅した受験生は,これまでもたくさんいるじゃないか。今回も,そうじゃないのか。
そう思って,問題文を2回,3回,4回と,読み直しました。
そして,確信しました。
間違いない,問われている内容は,自分が作った予想問題と全く同じだ。この問題ならば,自分で解説文も解答例も作ったから,内容には自信がある。しかも,普段出題されない分野だから,多くの受験生は余り出来ないだろう。ということは,自分が浮き上がるチャンスだ。
となれば,後は,一心不乱に書くのみです。4ページ分の解答用紙にぎっしり,答案を書きました。
このとき,神様って本当にいるのかも知れないと思いました。
2日目は,刑法,刑事訴訟法,民事訴訟法です。
刑法と刑事訴訟法はもともと得意にしており,今回も上手くいきました。民事訴訟法は苦手な科目でしたが,どうにか,平均程度には留まったと感じました。
論文試験が終わったとき,「今年はひょっとしたら」と感じました。大学受験の時も,司法試験の択一試験の時も,試験後の自分の感触と受験結果が全て一致していたので,自分の直感を信じるなら,この年は,論文に合格できることになります。
そうは言っても,あまりに長い間論文に落ち続けていたので,自分の感覚に自信がなくなっていたのも事実。9月下旬,合格発表を迎える頃には,「また落ちていたらどうしよう。今住んでいるアパートは建て替えると言うし,それだと,また住む所を探さなくてはいけないな。」と,半ば落ちたような気になっていました。
合格発表日,人事院前の掲示板に行き,おそるおそる,のぞき込みました。視線が自分の受験番号に近づくにつれて,足が震えてくるのが分かりました。
そうしたら,あったのです。自分の番号が。
目の錯覚ではないよな。いったん後ろを振り向いて,もう一度見よう・・・やっぱりある。それじゃ,今度は,メガネを外して,もっと掲示板に近づいて・・・やっぱりある。間違いない。論文を突破できたんだ。
このときの自分の感覚を,何と表現したら良いのでしょう。
肩の荷がどんどん下りて,体が軽く感じる。
空がとても綺麗に,身の回りのもの全てがキラキラして見える。
無条件に,「生きているって,スバラシイ」と思える。
このときの自分は,まさしく,仏教で言う「悟り」に一番近い状態だったと言えるでしょう。
そして,論文試験に合格した勢いで,そのまま口述試験にも合格し(苦手だったはずの憲法では,直前に見直していた箇所が出題されるなど,運に助けられました。),長い長い受験生活に,終止符を打ったのです。
今,振り返ってみると,自分が最終的に合格できた理由は,「実力があったから」というよりは,「運が良かったから」であるように思えます。
自分が勉強を続けられる程度に健康であったこと,家族に,子供を大学に通わせることができる程度の経済力があったこと,そして,自分が作った予想問題とそっくりな問題が本試験でも出題されたこと・・・,全部,自分の力ではなく,「たまたまそうなっていた」のです。
今回,受験生活を振り返ってみて,自分が合格できたのは「運が良かった」だけだから,自分の持っている法律的知識,ノウハウ,法曹事情などを,もっと積極的に世間に還元しなければいけないと思い至りました。
というわけで,本ブログでは,これからは,「法律豆知識」的な記事を積極的に発信していきますので,どうぞ宜しくお願い致します。
(終わり)