債権者の思い出(2)

某市,某会社の民事再生を申し立てたときのこと。

 

営業終了後,ある債権者が会社の事務所にやってきた。

坊主頭で眼光鋭く,声も大きい。

いかにも,かつてはよく見られたであろうスタイルである。

 

私が応対に出ると,

「若えのは引っ込んでな!」

と取りつくしまなし。

「オレは警察にも顔がきくんだ。ここにある会社のもん,持っていって構わないよな?」

と良いながら,「顔がきく」警察へ電話する。

 

「そうそう,会社,つぶれたんすよ。会社のもん,持っていっていいんですよね?・・・えっ,ダメ? 管財人が管理するから? そうなんですか。」

ちなみに,会社が申し立てたのは「民事再生」であり「破産」ではないから,原則として管財人は付かない。

まあ,それはそれとして,勢いをそがれた格好の債権者氏,「とにかく代金は払えよ。よく考えときな。」とか良いながら,立ち去っていった。

 

さて,会社の民事再生が淡々と進んでいたある頃,その債権者が恐喝で逮捕されたとの情報が入ってきた。

そのときは,あの男ならばやりかねんなと思っただけで,それ以上は深く考えることもなく,それ以降その債権者氏のことは忘れていた。

 

さらにそれから月日が流れ,会社の民事再生手続も終わり,記憶の中の出来事となりつつあったある日,債権者氏が再び恐喝で逮捕されたらしいとの情報が入った。

 

ああ,また同じようなことをやっていたんだと,少し懐かさを覚えた次第である。