以前にもブログで紹介しましたが、被災した企業が、震災の前と後の二重ローンに苦しまないよう、国は、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、千葉県の各県に、「産業復興機構」という組織を設けました。産業復興機構は、企業が抱える震災前の借金の債権を買い取り、その返済を10年間猶予することになっています。
以前にブログで紹介したときは、債権買取が決まった案件は2件でしたが(平成24年2月15日現在)、さて、その後、どこまで増えたのでしょうか。
この点に関する先日のNHKニュースの報道によりますと、平成24年11月末日現在、岩手県、宮城県、福島県の三県で、債権買取が決まったのは、59件だそうです。
県別に見ると、制度利用を希望した企業のうち、債権買取の対象とされたのは、岩手県で18%、福島県で9%、宮城県で8%、全体で12%だとのことです。
ということは、制度利用を希望した企業の数は約490件で、昨年11月から今年11月までの13ヶ月の間に、東北三県では、毎月平均して37~38社の企業から制度利用の申請があり、そのうち4~5社について債権買取決定がなされている計算になります。
個人版私的整理ガイドラインもそうですが、今でもあまり利用されていないですね。
産業復興機構の場合、債権を買い取ってもらうだけであり、債権そのものは免除されないので、被災した企業にとっては、旨みがないように見えるのかもしれません。
個人版私的整理ガイドラインのように、正面から債権の免除を認めれば良いのですが、そうすると、企業に対する貸付金は個人に対するそれよりもはるかに多額だから金融機関の損失が大きいですし、その「金融機関」も、多くは、三菱東京UFJ、三井住友、みずほと言ったメガバンクとは違って、財務内容に余裕があるわけではありませんから、国としても、そこまでは踏み切れなかったのでしょう。
とはいえ、企業の場合、既に、「産業復興機構」以外にも、「中小企業再生支援協議会」、「企業再生支援機構」、「事業再生ADR」など、債務整理のためのメニューがいくつも用意されています。これらのメニューは、いわゆる「二重ローン問題」対策に特化したものではありませんが、「二重ローン問題」への対処にも十分使えます。
NHKの報道のニュアンスは、「二重ローン対策が進んでいない」というものでしたが、「産業復興機構」のような新しい制度の利用だけが「二重ローン対策」ではないので、この点は、もう少し複眼的に考えるべきと思いました。