本「金融円滑化法出口戦略」を読む(4)

(前回は、こちらから)

 

 さて、金融円滑化が終了した後でも、金融機関からの借入金が「不良債権」と認定されないようにし、金融機関から支援を受け続けるためには、金融機関から、「経営改善の余地がある」と認めてもらう必要があることを説明しました(詳細は、こちら)。

 

 ただ、金融機関は、自分で債務者の事業を行っているわけではないので、「経営改善の余地」があるかどうか、そのままでは分かりません。

 そのため、「経営改善の余地」があるかどうか、金融機関が判断できるようにするためには、「経営改善計画書」の提出が必要になってきますし、「経営改善計画」の内容も、

それなりに説得力のあるものでなくてはなりません。

 そして、「経営改善計画」の内容が説得力を持つためには、改善計画の内容が、債務者の事業や財務状態等に関する正確な事実認識に基づいていなければなりません。これは、ちょうど、健康診断をやって健康状態を把握しなければどこに問題があるのか分からず、対策を立てられないのと同じようなものです。

 

 というわけで、金融機関は、債務者に対して、「経営改善計画」の他に、債務者の事業の健康診断も行うよう求めてきます。ここでいう「健康診断」は、俗に、「デューデリジェンス」と呼ばれています。

 

 本書では、デューデリジェンスのタイプとして、「事業デューデリジェンス」、「財務デューデリジェンス」、「法務デューデリジェンス」、「税務デューデリジェンス」「設備に関するデューデリジェンス」が挙げられています(32頁~48頁)。

  特に、「経営改善の余地があるか」という問題は、突き詰めれば、「事業が黒字化できるか」という問題に帰着しますから、事業デューデリジェンスについては、「SWOT分析」、「市場におけるポジション分析」、「業績評価指標の分析」、「PEST分析」、「その他事業リスク要因の洗い出し」などの項目に分けて、丁寧に説明されています。

 

 ところで、債務者が金融機関に経営改善計画を提出するための事前準備として、実際には、どの程度、デューデリジェンスが実施されているのでしょうか。

 この点は統計が見当たらないのでハッキリとは分かりませんが、私の経験から言うと、「事業デューデリジェンス」と「財務デューデリジェンス」は実施されるが、それ以外のデューデリジェンスはケース・バイ・ケースによるというのが、実情と思われます。

 また、債務者が個人事業主であるか、法人でも従業員数が数名~10数名程度であれば、デューデリジェンスは省略されることもあるでしょう。

 

 実は、デューデリジェンスに関しては、本書では触れられていないが、債務者が必ず押さえておくべきポイントがあります。

 次回は、その辺りを説明します。

 

(続く)