(前回は、こちら)
本「金融円滑化法出口戦略」では、金融円滑化法の期限到来後の状況を予想しています(26頁~27頁)。
その中で、「倒産は多発するか」という問いに対し、「倒産件数は増加するかもしれないが、大型倒産が頻発するという事態は考えにくい。」(26頁)と予想しています。
その理由について、本書では「当面は金融機関にとって比較的重要度の高い取引先へのソリューションの提示が優先されると思われ」るからだとしています(26頁)。
言葉遣いは難しいですが、要は、「つぶれたら困る大事な取引先に対する対応が先で、それ以外の取引先は後回し」ということです。
また、金融庁も、11月上旬に、「返済を猶予されていた中小企業でも、経営改善の余地があれば、その企業向けの融資を不良債権とは見なさない」との見解を公表し、間接的に、円滑化法廃止後に銀行融資の実態が変わることのないよう、後押ししています。
そうしますと、「経営改善の余地」を金融機関に説明できれば、来年4月以降も金融機関の対応は大きく変わらず、倒産が急増することはないと予想できます。
ただ、「経営改善の余地」が条件であり、無条件ではありません。よって、円滑化法の終了が近づいたら、金融機関から、「経営改善計画」の提出を求められるケースが増えるでしょう。
そして、「経営改善計画」を提出できないか、「経営改善計画書」を提出してもその内容に具体性が欠ける場合は、「経営改善の余地なし」として、不良債権、つまり、債権回収対象として認識されることになります。
というわけで、借入金の返済を減額・猶予してもらっている債務者で、まだ「経営改善計画」を作っていない方は、今のうちから準備しておいた方が良いでしょう。