ある事情により、被告側の代理人として、
過払い金返還請求訴訟に携わってきた。
これまで、原告側として関わったことはあったが、被告側として裁判に対応するのは初めてである。
今回、被告側として応対してみて感じたのは、被告にかけられるプレッシャーの大きさだ。
裁判官は、こちらの反論が終わる前から、「和解は考えていませんか?」と和解を勧めてくる。過払い金返還請求訴訟は和解で終了することが多いから、本件も同じと考えていたのだろう。
原告は、過払い金返還請求訴訟では自分たちの方が有利であると考えていたのか、「金融庁に報告しますよ。」「弁護士倫理上、問題があるんじゃないですか。」「時間稼ぎをしないでくださいよ。」などと、被告が早期に和解に応じるよう、プレッシャーをかけてくる。
通常のケースであれば、私も、無駄な抵抗はしないで、早々と和解していたであろう。もともと私は虫の殺生すらしない平和主義者だから(ただし、蚊とゴキブリはこの限りではない)。
しかし、本件では、詳細は説明できないが、通常の過払い金返還請求訴訟の場合とは、いくつかの重要な点で事実関係が異なっており、素朴な気持ちとして、「例え和解とはいえ、こんなケースにまで過払い金名目でお金を取られたらかなわん」と考えていた。
また、原告代理人の高圧的な態度に接するうちに、(このまま負けたら男がすたる。絶対勝訴してやる。)と、闘争心がむくむくと湧いてきたこともある。
(今、振り返ってみると、原告代理人は、和解に持ち込むために、敢えて高圧的に出てプレッシャーをかけてきたのだろうと思うが、逆にこちらの闘争心に火を付けてしまったという意味では、結果的に失敗だったのかも知れない)。
そこで、和解の考えは頭から追い出し、原告の主張の中で弱点と思われる箇所を探し出し、徹底的に反論することにした。
知り合いの弁護士達から知恵を借りたり参考文献を教えてもらったり、原告が裁判期日の前日の夜7時半過ぎに準備書面を出してきたら、期日に間に合うよう、徹夜で反論の準備書面を書き上げるというように、できる限り原告の主張の根拠をつぶすように務めた。
そのうち、原告側は、こちらが本気で抵抗してきたのを悟ったのか、普通の態度で接するようになった。
裁判官も、こちらが「和解はしません」と言明してからは、和解を勧めることがなくなった。
そんなこんなで、判決言渡し。
「原告の請求を棄却する」
つまり、こちらの勝訴であった。
自分としては、「この裁判は絶対負けたくない」と思っていただけに、
判決内容を知ったときは、思わず心の中で、「良い仕事をしたな。自分(^.^)」と1人ほくそ笑んだのだった。
(まだ、控訴される可能性が残ってはいるが)。