「TPP」という言葉は、時折新聞やテレビに出てきて、
TPP参加への交渉入りをするか否かとか、農業団体がTPP参加に反対しているなどの記事が時々出ています。
が、「そもそもTPPとは何か」、「TPPの目指しているゴール」は何か、良く分からない方が多いのではないでしょうか。
かく言う私もそうだったのですが、本書を読んで、大きく視界が開けました。
本書の主張は明解です。
「アメリカの狙いは、日本の農産物や医療制度・医薬品ではない」
「アメリカの狙いは、TPPを通じて、アメリカの知的財産権を守るシステムを構築し、『知財侵害大国』である中国を封じ込めることである。」
そして、関連法規の内容、担当省庁の動向を、歴史学者さながら実証的に検証しながら、TPPの真の狙いが、知的財産権の分野で経済的覇権を握る点にあることを論証しています。
このような視点はこれまでのマスコミ報道や関連書籍には見られなかったものであり、斬新ですが、アメリカの関連法規、関係省庁のプレス資料等を丹念に追いながら論述されているため、説得力があります。
また、関連して、著者が当事者として日米両国で経験した、知的財産権を巡る裁判の様子も紹介されています。
ディスカバリー(※1)を通して各当事者が手持ち資料を「全部」提出するとか、
デボジション(※2)の際、相手方の法律事務所で、相手方弁護士から、3日間にわたって、朝9時から午後5時まで連続して尋問を受けたなど、
日本の裁判とは全く異なるその様相は、とても興味深いです。
日本でのTPPを巡る言説は、「TPPで日本の産業がどのような影響を受けるか」という話ばかりで、「TPPを通じ、世界での取引ルールの設定にどのように関わっていくか」という発想がほとんど見られません。
その意味で、本書は貴重な存在であり、広く読まれることを期待します。
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ディスカバリー
裁判所での正式事実審理の前に、その準備のため、法定外で当事者が互いに事件に関する情報を開示し収集する手続。ダンボ-部箱数十箱分の書類を提出することも珍しくないという。 -
デポジション
裁判所での正式事実審理の前に、法定外で、各当事者に事件に関する情報について尋問する手続。通常は、それぞれの弁護士の事務所で行われ、朝から夕方まで、数日間~1週間にわたって集中的に尋問を受けるのが普通。