前に勤務していた法律事務所では、中小企業の再建案件が多かったので、交渉のため、金融機関に出向くことが多かったです。はっきり数えたわけではないけれど、裁判所よりも、金融機関に行っていた回数の方が多かったでしょう。
そのようなスタイルのお仕事を何年もやっていると、金融機関側の考え、スタンスというものが、何となく分かってきます。だからといって交渉が有利になるわけではないのですが、金融機関側の反応を予想できるようになったため、精神的には気楽な気持で交渉に臨めるようになりました。
さて、本書ですが、著者は元銀行員だったそうで、本書に書いてある内容は、私の体験に照らしても、うなずける点が多かったです。また、専門家向けに書かれた本ではないため、説明も分かりやすいです。
今は、中小企業円滑化法がまだ生きていますから、金融機関側も比較的大人しいと言えますが、来年3月末に円滑化法の延長措置が切れたら、金融機関側も徐々に、「貸し渋り」「貸しはがし」への動きを強めてくるでしょう。
というわけで、中小企業の経営者にとっても、個人事業主にとっても、本書は、読んでおいて損のない1冊と言えるでしょう。