震災前の金融債権の債権買取状況

東日本大震災で被災し、再建を目指す中小企業にとっては、いわゆる「二重ローン」問題の解決は避けて通れない問題である。

 

政府もこの問題を重視し、昨年11月には、震災前の金融債権の買取機関として、「産業復興機構」が設立された。これまでに、岩手県、宮城県、福島県、茨城県の4件で、約1000件の相談が寄せられているという。

 

そこで気になるのが、債権買取に至った件数であるが、2月15日現在、岩手県内の2件に留まっているいう(KFB福島放送ニュース)。

 

この実績はとても少ないように見えるが、産業復興機構が設立されてからまだ3ヶ月であり、この段階で結論を出すのは少し早い。

 

債権買取価格を決めるためには、それぞれの会社の担保状況、現在の収益状況、未来の予想収益、現在の資産負債状況について、ある程度念入りな調査が必要であるが、このような調査は、会社の規模にもよるが、1ヶ月から2ヶ月程度はかかる。

 

そして、調査の結果、おおよその債権買取価格がはじき出されたとしても、その価格で実際に債権が買い取られるとは限らず、買取価格について、産業復興機構と各金融機関との間で、厳しい交渉が行われているだろう。特に今回は、買取額が実際の債権額より安くなるケースが多いと想像されるので、各金融機関がすんなりと納得するとは考えにくい。

 

というわけで、産業復興機構による債権買取制度が有効に機能しているかどうかは、あと3ヶ月から4ヶ月は様子を見ないと何ともいえない。

 

債務者の立場からしたら早く決着をつけて欲しいだろうが、ある程度長期戦になることを覚悟した方が、精神衛生上はいいかもしれない。