小説家で、現役の精神科医でもある箒木蓬生さんの小説「風花病棟」が新潮文庫から出ていたので、読んでみました。
本書には、乳癌と闘いながら懸命に仕事を続ける医者、診療所を守っていた父を亡くし、寂れゆく故郷を久々に訪れた勤務医、三十年間地域で頼りにされてきたクリニックを今まさに閉じようとしている、老ドクターなど、医者の人生を巡る10個のストーリーが収録されています。
本の裏表紙では、本書のことをこのように紹介していました。
「医師は患者から病気について学ぶのではなく、生き方を学ぶのだ。」
また、箒木さんは、あとがきで、このように書かれています。
「映像作品にしろ、小説にしろ、物語の俎上にのせられる医師像は、神の手を持つ天才外科医だったり、金もうけに専心する悪徳医師だったりする。あるいは大学内で権力闘争にあけくれる医師だったりだ。
だが、実際の医療現場を担うのは、名医でも悪医でもなく、「普通の良医」なのだ。
私自身、精神科の名医一覧のようなものを眼にするたび、果たして、この人のどこが名医なのだろうかと感じてしまう。表舞台に現れない医師の中に、名医がいるのが現実なのだ。しかしこの良医は、患者にはすぐには見えない。じっくりとつき合わなければ彼らの優れたところは分からない。」
本書のテーマは、弁護士についても言えそうです。
弁護士は法律の専門家ですが、必ずしも人生の専門家ではありません。
法律は、本を読んだり、研修に出たり、実際に裁判をしたりして学びますが、生き方は依頼者から学びます(「反面教師」としての学びも含めて)。
そして、依頼者の抱えているトラブルと真摯な対峙を続けていくうちに、
「名弁護士」になっていくのでしょう。
私も、これからも研鑽を続けて、本書に出てくるような「普通の良い弁護士」になりたいと思ったことでした。